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めに財政支援の必要性が低下している理由の方が、「区市町村への移管」を踏み切らせた誘因ではないかと思われる21)
さて、以上から予想される「改善案」のコンセプトは、はたして「中間のまとめ」で確立した基本的な考え方を維持しているであろうか。換言すれば、基金運営委員会から2年前に示されていた「報告」(「地域福祉振興事業の今後のあり方について」、1994年6月)の線、すなわち「中間のまとめ」を「原則として踏襲」し、現行制度の「一部改善」に止める程度の「当面の見直し案」のそれを大きく踏み出しているのではないかと思われる22)。考えられるシナリオとしては、?@振興事業の縮小案、?A振興事業と区市町村への果実を財源とする補助金交付の2本立案、?B区市町村への果実を財源とする補助金交付案、の3通りであろう。
最後に、これ以上詮索することはやめにして、いずれのシナリオが採用されるにしても、日本の市民セクターが行政組織との連携において対等な関係をいかにしたら樹立できるかという根本的な観点から検討しておきたい23)。要するに「建て前」としては、基金活用という「妙味」によって「公の支配」(憲法89条)に属さない分野の諸活動に対して財政援助をしていることになっている、しかし、実際には行政目的の補完として特定の事業目的へ助成するというコンセプト(「補完的特定事業助成」とよぶ)から構成されている限り、行政主導の市民セクター活用論は避け難い(たとえ都が区市町村への財源交付案を選択したとしても、区市町村と市民セクターとは従来どおりの関係が継続することになる)。したがって、行政目的とは直接に手段の関係にない目的実現に向けて活動する団体の育成への助成(「独自的団体育成助成」とよぶ)に転換していかない限り、対等関係の樹立は難しいのではないかと思われる。
以上の点については、次に取り上げる事例のなかで、またあらためて検討することにしたい。

 

4. 東京都国際平和文化交流基金の改善方向

 

いまひとつここで検討する東京都国際平和文化交流基金(以下、交流基金)は、地域福祉振興基金の場合とはちがい、1996年4月から新しい条例の施行により、すでに改善策が講じられている事例である。冒頭で述べたような社会動向が、交流基金にどのように反映しているか、また地域福祉基金の見直しを考える際にいかなる点が参考になるのか明らか

 

 

 

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